映画「いのちの停車場」公式サイト

5月21日公開

原作

南 杏子/原作

プロフィール

日本女子大学卒。出版社勤務を経て東海大学医学部に学士編入。卒業後、都内の大学病院老年内科などで勤務ののち、スイスへ転居。スイス医療福祉互助会顧問医などを勤める。帰国後、都内の高齢者医療専門病院に内科医として勤務しつつ、自身の仕事周辺を題材にした執筆活動を行うようになり、16年、終末期医療や在宅医療を描いた『サイレント・ブレス』にてデビュー。以降、医療をテーマにした作品を発表し、話題を集める。

いのちの停車場 南 杏子

『いのちの停車場』/(幻冬舎文庫)

2020年に発表した著書第4作。ある事情から東京での救命救急医を退き、
郷里の金沢で訪問診療医に転身した62歳の女性医師・咲和子。
彼女が直面する在宅医療の現場を通じて、老老介護や終末期医療、
積極的安楽死などの医療制度のタブーに正面から向き合う人間ドラマ。

原作者からのメッセージ

「吉永小百合さんに主人公の医師を演じてもらい、50年、100年と人々の心を灯す映画にしたい―」。映画化にあたり、そんなふうに語る成島出監督の意気込みに感銘を受けました。小さな原作から熱い血の通った映像作品が生み出された源は、成島監督の燃える思いと吉永さんの大きな存在感にほかなりません。原作者として関われましたことを心からうれしく思います。

在宅医療との出合いは、研修医時代にさかのぼります。大学病院の医師たちが強いられる嵐のような医療ではなく、ベテラン医師による、日だまりのような、あたたかく美しい医療を目の当たりにしたのです。それは、患者さんの置かれた場所から始まる診療であり、互いに生きる仲間としてリスペクトを伴った関係でした。本作「いのちの停車場」にはそんな思いを込め、患者さんそれぞれの世界を支える存在として在宅医を描こうと努めました。

作中では、ベテランの女性医師・咲和子が、在宅医療を通してさまざまな患者に向き合います。在宅医療を受ける患者さんといえば、動きが止まった家の中、孤独で悲しい毎日を送っていると思われがちです。でも、そんなことはありません。患者さんたちの日常には明るい笑顔や感動もあり、残された家族にとって、その後の人生に大きな力を与えてくれる大切な時間でもあります。さらには、関わった医療スタッフの心にも忘れられない足跡を残してくれるものです。

「いのち」の終わりが、ほんの少しでもあたたかいものでありますように―。日々の診療で感じる私自身の思いを込めて、一人一人の患者さんを描きました。人生のさまざまなステージに立つあらゆる年代の方々に観ていただきたい。私もとても楽しみにしています。